どうも。世界のうりだです。
2000年以降、突如として落語ブームが巻き起こりました。そのブームは止むことがありません。
イケメン俳優のダブル主役で、落語家にフォーカスした”例のドラマ”の影響はあったかと思います。
私は2014年から、YouTubeで落語を聴くようになり、その魅力を理解しました。
今回は、私がもっとも聴いている「三遊亭金馬師匠」と、その落語についてご紹介をします。
王道にして平凡「三代目・三遊亭金馬」
「三遊亭金馬」の名前は、現在引き継がれており、今回取り上げるのは、先代の金馬師匠です。
現在の落語は、工夫みたいなのができるのをよしとしている傾向があるかと感じています。
桂文枝師匠なんかは、自身の創作落語一本で活躍されているくらいです。
金馬師匠は、古典落語の淡々と話しているだけです。王道にして平凡、なのにズバ抜けて面白いのです!
何度聴いても、また聴きたくなるという“不思議な魅力”が、金馬師匠にはあります。
二十四孝
「二十四孝」は、八っつぁんが親孝行する話です。
夫婦喧嘩の末、女房から離縁状を要求された八っつぁんですが、あいにく字を書けません。
仕方が無いので、離縁状はご隠居に書いてもらうことにしました。
女房ばかりでなく、親にまで手を出してしまったことを聞いたご隠居は、唐(もろこし)にいたという「二十四孝」の話をしてやります。二十四孝とは、親孝行をした二十四人という意味です。
ご隠居が話す親孝行のエピソードに、いちいち揚げ足取りをする八っつぁんの「頭の回転の速さ」をご堪能ください。
「マネタイズできる」という理由から、親孝行の”うまみ”を知った八っつぁんは、エピソードに沿って無理やり母親に親孝行しようとします。しかし、物理的に受け入れることができない母親に、苛立つ八っつぁん。
母親では埒が開かないので、父親の墓参りに出向くことにしました。
墓場に着いた八っつぁんに襲い掛かった、衝撃の結末とは?!
寝床
日曜の14時、NHK杯囲碁が終わると「日本の話芸」が始まります。
番組での演目で「寝床」が取り上げられていることは多いです。少なくとも年一回はやるはずです。
一言で言えば、「ジャイアンな話」です!( ^▽^)σ
主人公は長屋の大旦那。普段は気前が良くて、お店(たな)もんの面倒を自分事として引き受けてくれる人格者です。
でもひとつだけ、大旦那には困った趣味があります。それは「義太夫語り」です。
大旦那が語る義太夫の下手さと言ったら、ありません。思い立ったように「稽古のついでに、皆に聞かせてやろう!」と、お店もんを招集します。
大旦那の義太夫の”ひどさ”は、当然お店もんの知るところで、いつ招集されやしないかとびくついています。
「あんなヘタクソな義太夫、そうしょっちゅう聞かされてはたまらない!」というので、それぞれが参集できない理由(ネタ)を常に考えています。
結局、全員が不参加を表明!
これに怒った大旦那は、店空け証文をかさにして、全員に退去を命じます。
いくらなんでも、家を追い出されてはたまりません。というわけで、結局全員が参集します。
寝床は、大旦那とお店もんの「押引き」が醍醐味です。
落語の特徴のひとつに、話の本筋とは結び付きそうもないタイトルが付いている場合があります。
その最たる寝床は、最後まで聞かないと、まるっきりわかりません。
聴衆は話の途中では帰れず、集金まで付き合わざるを得ないという、「取りっぱぐれない演目」です。
山崎屋
べっ甲問屋「山崎屋」の若旦那が主人公です。若旦那とは呼ばれていますが、ボンボンゆえ、日々遊び散らかすだけの放蕩息子です。
そんな若旦那が、番頭に小遣いの無心にやってくるところから始まります。
お店のお金は自分のお金だと思っている若旦那。ですが、番頭にとってはそうではありません。
頑なにお金を出さない番頭。でも若旦那は、そんな番頭の弱みを握っています。
「お父っつぁん! 番頭さんが加茂家人道に妾を囲って・・・」
横領の事実を大旦那に知られてはいけない。だからといって、若旦那の提示した五十両が出せるはずもありません。
番頭が思案した結果、若旦那が惚れている花魁と結婚させてやるという「代替案」を提示します。
番頭くらい機転の利く”野党”がいれば、この国はもう少しマシなんでしょうけど(^_^;)
さて、若旦那はなんと、花魁と結婚できてしまいます。若旦那の微々たる辛抱と、番頭の「狂言」は、見事図に当たったのです。
山崎屋に嫁入りした花魁ですが、出自が問題です。大旦那には花魁だったことを隠しているので、素性は明かせません。
クライマックスでは、若旦那の嫁である花魁と大旦那がサシで話をすることに。嫁の出自を探る大旦那ですが、果たして花魁だったことを隠し通せるのでしょうか?!
アンジャッシュの「すれ違いコント」の原型が、ここにありました(?)。
道灌(どうかん)
出だしは、八っつぁんがご隠居宅に遊びに行くというものです。この行動は、先の「二十四孝」とも通じます。
このパターンは、あとに紹介する演目にも出てきます。汎用性の高さも、落語を覚える上では重要です。
八っつぁんが最後に見せられたのが、太田道灌公の有名なエピソードに通じる絵でした。
この絵には、有名な和歌がセットになっています。この和歌は、傘を貸せないことを婉曲して伝えるためのものです。
その和歌を、ご隠居に書いてもらいました。感じの読めない八っつぁんは、仮名で書いてもらいました。
「ななへやへ はなはさけとも やまふきの みのひとつたに なきそかなしき」
お家に帰った八っつぁんに早速、「貸してほしい」という客人が現れました。でも客人が貸してほしかったのは、傘ではなく提灯でした。
それでもなんとか客人に、「傘を貸してくれ」と言わせた八っつぁん。
「お恥ずかしゅうございます!」
そういって客人に、ご隠居に書いてもらった和歌を見せました。当然、理解できない客人。
八っつぁんは得意げに、「おめえは 歌道(かどう)に暗えなあ!」と言います。
さて、客人が提灯を借りに来た理由とは?!
登場人物はほぼ、八っつぁんとご隠居の二人。非常にシンプルです。
登場人物の少なさ、簡明さから、あの(七代目)立川談志師匠はこの話を「前座噺」と定義付けていました。
この話を聞けば、確実に「歴史の知識が増える」というメリットがあります!(゜∀゜)
また、ご隠居の「歴史画コレクション」の紹介は、落語家らしさを出す上で登竜門にふさわしいと思います。
一目上がり
遊びに来た八っつぁんを迎え入れたご隠居。
新しくなった床の間が気になった八っつぁんがご隠居にそのことを言うと、ご隠居はご満悦。
なんとか褒め言葉を紡ぎ出しますが、乏しい八っつぁんのボキャブラリーでは、ご隠居の心に響きませんでした。
「こういうのは『結構な賛(さん)がしてありますな』と言って褒めるものだ!」
さらにご隠居は、ちゃんとした褒め言葉をいうと、尊敬の念をもって呼ばれることを八っつぁんにアドバイスします。
最終的に「正一位」「八五郎大明神」に上り詰めることを夢見た八っつぁんは、大家さん、お医者さんを訪ねます。
八っつぁんの思惑とは裏腹に、それぞれの家で、「賛」ではなく「詩(し)」、「詩」ではなく「悟(ご)」だとたしなめられ、まったく結果を出せません。
「賛」「詩」「悟」。褒め言葉というのは、まるで数字のように一目ずつ上がっていくことに気づいた八っつぁん。
「次は、きっとロクだ!」と山を賭けて、勇んで近所のたっつぁんの家に。
自信満々で「いいロクだな!!」と褒めた、八っつぁんが見せられた掛け軸とは?!
お正月にふさわしい、おめでたい締めくくりです。
子褒め
この話も、八っつぁんがご隠居宅に遊びに行く王道パターンから。
八っつぁんがご隠居宅を訪ねたのは、なんでも行けば酒が飲めるというからです。
さらにこの後、ご隠居宅の内装を褒めるところは、「道灌」「一目上がり」にも通じます。
「子褒め」では、ご隠居からお世辞について教わります。いやいや、ここまで「一目上がり」と全く同じコンセプトですよ!?w(゜o゜)w
今回は、初対面の人の年齢に対し、わざと若く言う「鯖を読んだ」褒め方を伝授します。
とりあえず街中でやってみますが、まるでうまくいきません。
失意(?)の八っつぁんが最終的にたどり着いた相手は、なんと赤ちゃんでした!
1歳児を若く見るためには、「0歳児」としなければなりません。
八っつぁんが「0」を表すために放った、衝撃のお世辞とは?!
冒頭の「酒の産地」の勘違いが、ここにかかってくるなんて!(゜Д゜)
歳暮回し
「歳暮回し」は、金馬師匠オリジナルの話のようです。
お歳暮って、もらってうれしいですか? 何となく、送り主の都合で選ばれているイメージがありませんか?
そんな「ありがた迷惑」な確率が高いお歳暮を、そのままどっかに回してしまおうと画策した夫婦の話です。
例年お歳暮を贈っていない、別に贈らなくてもいい関係の人になら、「中身が大したものでなくても構わないだろう。」という軽い気持ちで、ご主人が大家さんの家にお歳暮を持っていきます。
ご主人が大家さん宅にいくと、家賃が滞っていることをなじられます。
負い目のある手前、ご主人はすぐには帰れません。
「不躾ではありますが、中身は何です?!」
大家さんからいよいよ、核心を突く質問が為されました。
さあ、ここからが本編です!(゜∀゜)
封を切ってないお歳暮ですから、中身をしらないご主人。まさか「知らない」と言うわけにはいきません。
形や色など、カテゴリ別に問う大家さん。大家さんの問いに対してわけのわからない、雲をつかむようなことを滔々と述べるご主人。
最後に味を聞かれ、ご主人が回答します。
「面目なくって、穴があったら入りたい味ってんです! あたし、急用を思い出しまして…」
ご主人が逃げ帰った後、包みを開けた大家さんがビックリ!
わけがわからないご主人の回答が、全部当てはまったモノだったのです?!w(゜o゜)w
さて、そのお歳暮とはいったい、なんだったのでしょう?!
茶の湯
どちらかと言うと馬鹿馬鹿しいものを3選。
その先陣を切る話といえば「茶の湯」でしょう。
ある大旦那が息子に身代を譲って、ご隠居としての暮らしを始めたときのお話です。
大旦那は根が倹約家だったのため、新居は建てず、引っ越し先に今ある長屋の大家にしました。
ただ煙草をのんで一日を終えていたご隠居に、小僧の定吉が趣味を持つように促します。
部屋には囲炉裏と、前に住んでいた人の茶道具一式があることを思い出しました。
そこで手っ取り早く「茶の湯」、今で言う茶道をやってみようということになりました。
さて、茶の湯のやり方は見たことがありましたが、詳しいことは二人とも知りません。
定吉の思い付きで提案された茶の湯の「中身」を、ご隠居は全て受け入れてしまいます。
出来上がった、ただ”お茶っぽく見える飲み物“を、苦汁であると知りつつも飲み干す二人。
この苦汁を味合わせようと、長屋の人たちを誘います。長屋の人も、茶の湯なんて何も知りません!
誰も知らないことをいいことに、「言いだしっぺにしたがわざるを得ない」のを面白がるお話です。
茶の湯は、「立川流の最高傑作」と言っても過言ではない、立川志の輔師匠の動画もアップされているのを見ました。
王道と立川流の差を比較してみるのも、いいですよ。
長屋の花見(貧乏花見)
長屋の大家が、店子(たなこ。住人)に集まるように促すところから始まります。
何の話かビクビクしていると、大家はなんと花見に行こうというではないですか!?
しかも、誰からも一銭もとらないと言います。
花見をするには、「お酒」と「ご馳走」が必要です。もちろん大家は、それらを用意していると言っています。
それでも、一銭もとらない衝撃の理由とは?!
いっぱいの生活をしている庶民に対し、もっとみじめな長屋の実態をコミカルに描き、元気づけるためのお話です。
七の字
「字が書けない」ことを題材にした話は、落語には多くございます。
先の「二十四孝」もそうですし、「代書屋」なんて本当にあった職業がネタになったりしています。
主人公は田中七兵衛。今でこそ立派な名前ですが、七兵衛を古くから知っている人には、こんなフルネームがあったことを知る人はいません。
厄介者、居候暮らしだった七兵衛。当時は「グズ七」の通り名で過ごしてきました。
そんな七兵衛に、ある日親戚の遺産が舞い込んできたのです。一気に大金持ちになった七兵衛は、旧知の八っつぁん、熊さんに声をかけられても、鼻にもかけません。
それはそうです。彼らは「グズ七」と呼ぶのですから。そんな名前で振り向いてしまったら、金持ちの七兵衛しか知らない人に面目が立ちません。
なんとか七兵衛を捕まえた八っつぁん。七兵衛の腰に差した「矢立て」に目を付けました。矢立ては筆入れとして使われていたものです。
「字を書く?! おめえ長屋に居たころ、『いろはの”い”の字は、どっちから書くんですか?』って、聞いて来たじゃねえか?!」
そうです。七兵衛の出自を考えれば、字など書けるはずはなかったのです。
しかし、ここで引き下がるわけにはいかない七兵衛。引き下がっては、今後大きな顔ができなくなります。
一世一代のハッタリとして、二人に自分の名前の「七」の字を書いて見せることに。果たして、結末や如何に?!
馬鹿馬鹿しい話は、とりあえずここまでです。
三軒長屋
主人公は鳶職の勇み肌・政五郎。相手は、政五郎の住む長屋を家質(かじち)にしている伊勢谷勘右衛門。
勘右衛門の妾(めかけ)が、政五郎の住む長屋の真ん中の部屋に住んでいます。隣の騒音に、妾が嫌気を刺し、そのことを勘右衛門に告げたのです。
幸いにして、長屋が「抵当流れ」になりそうであることを勘右衛門は知っていました。もし流れてきたら、長屋を一軒家に建て直すと、妾をなだめます。もちろん、長屋の住人は追い出すことになります。
この事実を、長屋の井戸端で口の軽い妾の女中が、政五郎の女房に聞こえるように言いふらしています。
結果的に勘右衛門の妾に「出ていけ!」と言われているようなものであることに、納得がいかないという政五郎の女房が、政五郎を焚きつけます。
政五郎は妙案を思いつきます。実行するためには、長屋の向こう端の住人の協力が必要です。
向こう端の住人と言うのが、楠の運兵・橘正勝(くすのきのうんぺい・たちばなのまさかつ)。
二人は見事、長屋に居続けたまま勘右衛門から「引っ越し費用」をせしめることに成功するのですが、はたしてその方法とは?!
花見の仇討ち
生涯聴いてきた落語で、もっとも落語らしくかっこいいと思ったのが、この「花見の仇討ち」です。
上野の摺鉢山で、花見の趣向を凝らそうという四人の話です。
まずこの話には、現在は消え去ってしまった文化があり、その知識が必要です。
「六十六部」という職業(?)があり、その略称が「六部」(ろくぶ)だったことを、知識として持っている必要があります。
一人が六部役、一人が仇役、後の二人が仇討ち役として、立派に計画が立ちました。
当日、いきなり計画が破綻します。六部が、自身の親戚に捕まって来られなくなってしまったのです。
そんなことは、他の三人は知る由もありません。六部が来るものと思って、それぞれの持ち場についています。
六部と落ち合うはずだった仇討ち役の二人が、六部が来ないことにしびれを切らした 、立ち回りの稽古を始めます。そこに、運悪く通りかかった侍の頭を、仕込み杖で叩いてしまいます。
「切り捨て御免」をなんとか免れ、いよいよ仇がいる場所にたどり着きます。
六部を待つしかない状況で、延々と五部の立ち回りをする三人。そこにさっきの侍が「助太刀」に来ます。
本当に助太刀に参加されては、仇役が斬られ、ウソだとわかったら全員が斬られる状況です。
絶体絶命のピンチを切り抜けるため、侍に放った捨て台詞とは如何に?!
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三代目三遊亭金馬 ベスト落語集 [ 三遊亭金馬[三代目] ]
まとめ
本当は金馬師匠の知っている話なら、全部書きたいくらいです。リクエストがあれば、追加しようかな(;´▽`)
最後に、動く金馬師匠の貴重な映像を載せておきます。
金馬師匠のだみ声は、睡眠導入に非常にいいです。知ってる話なら、途中で寝られますからね( ^ω^)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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