吉野源三郎「君たちはどう生きるか」が漫画化され大ヒットしたのが、2017年らしい。
とはいえ私は、原作も漫画も読んでいない。
ブックオフで購入するべきなのだろう。もちろん、原作の方を。
そんな「柳の下の泥鰌」を掬いに行ったタイトルを付したスタジオジブリの最新作、宮崎駿監督作品「君たちはどう生きるか」を見てきた。
おそらく、もっとも参考にならないネタバレ記事だろう。
それゆえ、当記事で想像力や期待を膨らませて鑑賞に出かけてもらえれば幸いだ。
宮﨑駿「君たちはどう生きるか」
7月17日(月) 海の日
連休はYouTubeに飲み込まれていく。
そんな3連休の朝、岡田斗司夫氏の最新動画が上がってきた。
ジブリ最新作「君たちはどう生きるか」のレビューだった。
メンバーではない私は、「ネタバレ無」の無料部分しか見ていない。
動画を見終えると、早速見たくなった。岡田氏の映画解説がリアルタイムで役立つ日が来るとは、思いもしなかった。
滅多に外出する気にならない夕方。無事に家を出ることができた。
17:50の回のチケットを購入。ジブリ映画を劇場で見るのは、実にトトロ以来(年齢がバレる)。
トトロを鑑賞した劇場が、奇しくも同じ浦和駅西口の「ヴェルデ」だった。「ヴェルデ」の響きを、往年の浦和区民にはここで、ぜひ噛みしめていただきたい。
0.本編概要(箇条書き)
・唯一公表されている”ガッ○ャマン“の画だが、あれは主人公ではない。そしてあの画だけに、過度な期待をしない方がいい。
・オリジナルの「君たちは…」とは、wikiを見ると「主人公が金持ちのボンボン」と「女中とばあや」という設定が一致したようだ。
・設定は「トトロ+神隠し+火垂るの墓」。母親が死んじゃった”体”なのは、まんま火垂るの墓。
・クライマックスの舞台は、たぶん「不思議の国のアリス」。そこに「ポニョ+もののけ姫」。ヒッチコック「鳥」も付けよう。
・主人公を食おうとする、大量のインコがかわいい(´ω`)
・「ラピュタ」級の崩壊シーン。
・ヨットの列は完全に、「紅の豚」の海バージョンw
・「シン仮面ライダー」みたいな”隠しキャスト”って、今流行ってるの?
父親の声は、聴いた瞬間わかると思う。(ジブリ2度目の出演)
この「アハ体験」のために、本作は一切の宣伝をしていなかったのがうなずける。まさか、「ちょ、待てよ!」なんてセリフがあるとは!?
気持ち悪いブルーバックのエンドロールを見て、何人わかったかをチェックする楽しみがある。私は全然わからなかったorz
このメンツで宣伝無とか、正直いかれてる!?(゜Д゜)
・セリフが全編通して棒読み(特に主人公)なのは、意図的なはず。
・エンディングはYGの新曲(ここにも庵野秀明のシン・シリーズへの憧憬)。ラジオべったりの私も、聞いたことない曲だった。
1.脱力
「俺も庵野みてーの、作ってみたいな…」
「シン・仮面ライダー」を見た宮崎翁からのつぶやきから、「君たちは…」の制作に取り掛かった。(完全な妄想です)
岡田氏も言っていたが、「君たちは…」とは、【シン・宮崎駿】だというはよくわかった。茶髪かどうかは知らないが。
まず、画にうるさいはずの宮崎翁だが、”手抜き”と思われる部分が多いのがわかる。
「動かない観衆」とか、従来のジブリでは許されなかっただろう。
時代設定は「戦中(1920年くらい」。
実母にそっくりの継母(実母の妹)は、すでに妊娠していた。よくもこんないい女が、他家に嫁いでいなかったものだ。
一家は疎開を兼ねて、継母の実家に引っ越す。
継母の実家の裏には塔があり、この塔が異世界に通じている。
身重の継母が”なぜ”か塔に行き、しっかり異世界転生している。そして”なぜ”かは、最後まで回収されない(゜Д゜)
それでも、継母の奇行がなければ、ジブリワールド全開の異世界描写が始まらないのは確かだ。
この経緯を考えるのが面倒くさかったという【脱力】こそ、作品を最後まで終わらせる原動力になったのではないかと、私は推測するのだ。
さて、現実世界で主人公が「便所」と言う。ジブリでこのワードを聞くことになるのに驚いた。
だがそのあとの異世界で、主人公はなんと「トイレ」という。そんなワード、時代設定的には存在しないはず。なのに、ばあやの一人・キリコ(異世界Ver.)にも、「トイレ」が通じてしまうのだ。
このシーンを見ながら、思わず「えっ!」と言ってしまった。
2.粗忽長屋
「粗忽長屋」という、とんでもない落語がある。何がとんでもないかというと、同じ人間が二人登場するところだ。
長屋の住人である八五郎が、”行き倒れ”を囲む野次馬たちに遭遇する。
その”行き倒れ”の顔を見ると、同じ長屋に住む熊さんだった。
「俺はこいつを知っている。熊っていうんだ。だから熊自身に、この身柄を引き受けさせるから、呼んできてやる!」
何を言ってるかわからねー。死人の身柄を、死んだ本人に引き受けてもらうと言っているのだから、無理もない。
八五郎に連れられ、熊本人が登場。自分であることを確認した上で、身元を引き受ける。
「死んだ自分の身柄を引き受けたはいいが、引き受けた俺は、一体誰なんだ。」
この粗忽長屋に挑んだのが「君たちは…」の主旨だったりする。
粗忽長屋では熊の一人分だが、「君たちは…」ではなんと、そのドッペルゲンガーが二人分!?
死んだはずの実母と、(たまたま主人公の道連れになったように見える)ばあやのキリコの二人が、異世界の住人として存在する。
キリコに至っては、自身(!?)である人形を、主人公に手渡したりするw(゜o゜)w 死んだはずの熊が、自身の身柄を八五郎に引き渡すイメージだろうか(^_^;)
7人のばあやのうち、キリコだけが能力者として、異世界に存在したのは、果たして偶然だったのか。たばこ好きに、そんな伏線があったとは。
異世界脱出を果たした後は、全員でインコとペリカンの”糞まみれ”で終了する。この鳥糞の描写だけは、妥協が無かった。
総評
岡田氏の無料部分を見た限りだと、もっとぶっ飛んだ映画だと思った。そういう意味では、期待外れだったかもしれない。
これまで、「完全無欠」を貫いてきた宮崎翁の作品を考えたら、ここまでハチャメチャにしただけで、立派なものだと評価したい。(謎の上から目線)
便所とトイレの件はもちろん、継母やキリコといった主要人物の名前が、後から呼ばれるようになるとか。イライラする人も多いだろう。
「0.世界観」で書いたように、過去のジブリ作品はもちろん、「鳥」や「粗忽長屋」といった外部の知識があると、より本作品の面白さが増すことだろう。
「お金を払って、もう一度見るか?」と聞かれたら、還暦回ったトム・クルーズのアクションを見るためにとっておきたい、と答えるだろう。
DVD、もしくは半年後の金曜ロードショウを待て!
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